My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
『ティモシー? ティモシー!』
朝日を浴びながら、逃げ出した屋上で大の字になって日光浴。
真冬だけど、この時間帯なら太陽の光でそれなりに温かい。
BGMはいつものエミリアの声。
このキンキン声はあんまり好きじゃねぇけど、それでもエミリアがオレの名前を呼ぶのは好きだから。
ま、BGMくらいにならしてやってもいい。
『もぉっ勉強の時間になるといなくなるんだから! ティイモォシィイイ!!!!』
…あれ怒り狂ってんなー…。
大体、朝飯の後すぐに勉強の時間ってなんなんだよ。
朝飯の後は食後の運動とかだろフツー。
頭使うより体使った方がいいだろ。
オレまだ遊び盛りな子供なのに。
朝っぱらから机に噛り付いてオベンキョーだなんて冗談じゃねー。
「──っとぉ! それよりっ」
はっとして、ガバリと体を跳ね起こす。
いけね、大事なこと忘れてた。
日光浴ついでに確認するつもりだったんだっけ。
「よっと…」
屋上の柵を乗り越えて、壁に張り付きながらなんとか窓の中を覗き込む。
このハースト孤児院三階の隅っこ南部屋。
そこは院長先生の部屋だ。
『寄付が…!?』
『ええ、院長先生…匿名で今朝。それも凄い金額で』
『まぁ…』
そーっと覗き込んだ窓の中には、院長先生とシスターのパメラの姿。
こっそり外から覗いているオレには気付いてない。
しめしめ…。
『此処の閉鎖を聞いて、ぜひ力になりたいと手紙が…』
『この方…まさか以前も寄付を下さった方かしら?』
『恐らく……今時奇特な方がいるものですねぇ』
院長先生の手には、オレがこの孤児院に当てた手紙と寄付金の通知。
それを見てほっとする。
よかった、どうやらちゃんと手続きはできてたみたいだ。
まじまじと寄付金の紙を見る院長先生の驚いたような、感心したような顔。
その顔を見ると自然と口元が緩んでしまう。
「よっと♪」
再び屋上に戻ってコンクリートの地べたに大の字で寝転がる。
口元は緩みきって戻せそうにない。
ふっふっふ。
院長先生、吃驚してたなー。
なんたって今回の寄付金は今までで一番でかい──
「……」
…でかい、けど。
でも本当ならもっと稼げたはずなんだ。