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My important place【D.Gray-man】

第41章 枷



 雪が俺に与えてくれた世界がある。
 けれど俺にも抱え続けている世界がある。
 だからこそ雪にちゃんと話すべきだと思う。

 俺が"枷"を抱えている意味を。
 アルマのことを。
 そしてアルマに手を下す理由となった、"あの人"のことを。


「すー…」


 背後から届く微かな寝息に、もう一度首だけ捻る。
 振り返った視界に映ったのは、器用に抱き付いたまま団服にすっぽり包まれてすやすや眠る雪の姿。

 前に一度、約束した。
 言い淀んでいる"何か"を俺に伝えに来た時は、俺も伝えたいことがあると。
 枷の意味を、アルマのことを、その時はこいつに伝えようと決めた。

 …だがアルマのことは話せても…あの人のことは伝えられるのか。

 俺にとってあの人は、誰であっても譲れない唯一の存在だ。
 アルマ相手でさえも、譲れなかった人。

 その存在を知った時、こいつはどんな反応を示すのか。


 ………良い気は…しねぇよな、多分。


 惚れた男が他の女を特別に思い続けてるなんて。
 理由がどうであれ、普通良い気なんてしない。

 誰かに俺のこの思いを認めて貰いたいなんて思ったことはない。
 それ以前に誰かに話そうと思うことすらなかった。

 だが……雪には受け入れて欲しいと思う自分がいる。
 そんな俺ごと受け入れてもらえたら、と望む自分がいる。

 …こいつ自身を枷にした時と同じ。
 俺の勝手な我儘だ。


「……はぁ」


 捻っていた首を返す。
 完全に夢の世界に船を漕ぎ出している看守を見ながら、口からは溜息が漏れた。

 あの人のことを雪に伝えて、果たしてどうなるのか。
 はっきりとした答えなんてもんは見つからない。

 俺が雪の立場で考えたら、こいつが他の男を譲れないもんだと抱えてたりしたら──…


「……」


 ふと思い出したのは、任務前に雪が寝惚けて呼んでいた中途半端な野郎の名前。
 ………あれはまさかそういう類の男じゃねぇだろうな。


「チッ」


 考えると苛々してきてつい舌を弾く。
 自分は抱えてる癖に雪にそういう存在がいるかと思うと、ドロドロした黒い感情しか浮かばない。

 本当に、身勝手な思いだ。

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