My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
"拘束"
自然と浮かんだその言葉に、嗚呼と気付く。
これもある意味では"縛り"なのかもしれない。
細い腕と拙い動きで、けれど俺の心と体を縛るには充分な力を持っている雪の体。
俺を一人で立たせたくないと言った。
傍に繋いで縛っておきたいと言った。
雪のその言葉が甘く脳裏に浮かんで響く。
この憎むべき教団で生きているうちは、誰かと共に世界を歩もうなんてアルマ以外望まないと思っていたのに。
…雪が傍にいるだけで、俺の視界に鮮明に広く映し出される世界。
いつものように幾つも舞い落ちる蓮華の花々で、俺の視界は埋め尽くされない。
そんな俺にとって真新しい世界は、変わらず教団にいるはずなのに、まるで別世界に思えた。
初めて感じた時は壮観だった。
こんな世界があるんだと、感銘さえ受けた。
…ただ…俺が俺である為に在り続けてくれた"あの人"のことを…忘れていくようにも思えて、言いようのない不安も少しだけあった。
雪が俺に見せてくれる広くクリアな世界。
そこに俺は全て身を預けてしまっていいのか。
…雪が現れるまで俺をずっと縛り続けていたのは、この視界を埋め尽くす蓮華の花だ。
この体と心は今在る俺と記憶の俺と、別々のもの。
そんな"YU"としての俺は、引き千切られてバラバラにされた中途半端な記憶の断片の寄せ集め。
聖戦の為に死んで、聖戦の為に命を縫い付けられた、聖戦の為の戦う道具。
そんな自分の正体を知った時、そんな世界の無情さにアルマが生きることを諦めた時。
その度に死を受け入れた俺を、それでも尚生かし続けたもの。
そこから目を背けているようで、微かな不安感のようなものも確かに生まれていた。