My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「…あったかいなぁ」
背中に触れた存在が、不意にしみじみと呟く。
後ろから抱きしめる小さな手は、しっかりと俺の体に回されたまま。
「不謹慎だけど…こうしてると、休日にユウの部屋でまったりしてた時のこと思い出すかな」
「…気ィ抜き過ぎだろ」
「あはは。ごめん」
「どうせ任務中も、食いもんのこととか考えてたんだろ」
花より団子だからな、こいつ。
…違った、花も食糧だからな、こいつ。
「…何故わかったし」
「単純なんだよ」
どうやら俺の予想は当たったらしく、まじまじと感心気味な声が届いた。
「だってフランスって言ったら料理の美味しい国でしょ。折角来たなら食べたいじゃない、美味しいフレンチ」
「そうやって任務疎かにしてたんだろ」
「してないよ。結局フレンチは食べなかったし、ちゃんと仕事してたから。色々…失敗はしたけど……あ。」
「? なんだよ」
「…や…そういえば…ルパンと…その、怪盗Gの捕獲に乗り出してた時のこと。思い出して…」
ルパン。
その名を躊躇するように口に出す雪は、まだ俺に怒られるとでも思ってんのか。
手当てを終えた後、問えば雪は正直に俺に全部話した。
この数週間、何があったのか。
怪盗Gの調査。
ルパン三世との遭遇。
数珠を担保に同盟を組まされて、ルーブル美術館でその猿泥棒に出し抜かれたとか。
「なんだ、まだあんのか」
「…うん…大したことじゃないんだけど…」
首だけ捻って、背中にくっ付いてる雪に目を向ける。
その顔は難しそうに何か考える素振りを見せていた。