My important place【D.Gray-man】
第10章 夢Ⅲ.
「…………はぁあ~…」
沈黙。
後の、大きな溜息。
逃げられた…のかは、定かじゃないけど。
とりあえずその場は落ち着いたのか。
思わず大きく息をついて、ドアを押さえたままその場にずるずると座り込む。
バイオハザードな状況だけでも怖いのに…やめて下さい、本当に…。
「ラビがあんなこと言うからだ…」
変な声が聞こえたとか、実験中に亡くなった人の話とか。
……。
…そういえば、なんの実験で亡くなったんだろう。
「っ駄目駄目」
思わず疑問に思ったことを、頭を振って追い出す。
そういう怖いこと考えちゃ駄目。
そういうこと考えてると、そういうものが寄ってくるんだから。
そう、前にラビが言ってたんだから。
顔面真っ青にして。
「…こういう時、神田がいると心強いんだけど…」
怪奇現象が起きる所にイノセンスあり。
そんな合言葉がある程、イノセンスは怪奇なことに密接に関係している。
イノセンスのその力が、奇妙な現象を巻き起こしているだけなんだろうけど…故にイノセンスの回収に向かう任務では、怪奇現象に出会すことも多くて。
私も何度も、そういう身震いするような出来事を任務中に体験したことはある。
『何ビビってんだよ』
その度に一緒に任務を組まされていた神田は、呆れた顔で私を見ていた。
そんな神田は本当にそういうものが平気なのか、イノセンス以外の本物の心霊現象を前にしたって怯える様子を見せたことは一度もない。
…割と救われてた気がする。
神田のあの堂々と構える姿勢に。
怖いものは怖いけど、アレンやラビみたいに一緒に怖がると恐怖心は更に膨れ上がるから。
平気な顔してる神田が傍にいた方が、どことなく安心する。
…安心?
「……」
私、安心してたのかな…。
今までの任務で、神田に心を開いたことはなかったけど。
「…戻ろ」
よくはわからないけど、今は何よりも神田の傍が一番落ち着く気がして、早く戻ろうと俯いていた顔を上げた。
────…" "…
ぞわ、り
「……っ?」
"それ"をなんと言えば、いいのだろう。