My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
言葉は最後まで音とならず消えた。
代わりに目で問えば、ルパンはその特徴ある口元だけを緩めて見せた。
「なんでだろうな?…多分、純粋に興味が湧いたんだろうよ」
真っ直ぐに見下ろしてくる目は迷いなく私を捉えたまま。まるで捕らえられたように、離さない。
「黒の教団って組織もそうだが…それ以前に、月城雪って人間にな」
……あれ。
私、自分の苗字なんて教えてたっけ?
疑問には思ったけど答えは見つからないんだろうと、早々諦めた。
この大泥棒には色々とお見通しなんだろう。
「ということでレディ。乗り掛かった船だ、ついでに警察署の外までお送り致しましょう」
「……へ?」
まじまじと見上げていたら、不意に気取るように片膝を付いたままルパンが片手を差し出した。
握れとでも言うかのように。
唐突な誘いに思わず反応が遅れてしまう。
え、何急に。
「あの怪盗Gを捕まえなけりゃ、ずっと檻ん中だろ? 無罪のレディを男共の巣に放ったままは見過ごせねぇな」
「ぃ…いいよ、そんな。そうしたらルパン達がまた警察に追われるんじゃ…」
「元から警察にゃあ追われる身さ。それに足に怪我もさせちまったし。オレ様、借りは作らねぇ主義なのよ」
なんだろう…律儀だなぁ。
というか義理高いのかな?
あのアルセーヌ・ルパンは義賊的な怪盗だったっていうけど、ルパンも少しそんな感じがする。
…多分、本人に言ったら嫌がられそうな気はするけど。
「でも…」
「ああ、はいはい」
それでもジジさん達を置いていけないし、いくら無罪だからってそんな逃亡紛いなことして刑は重くならないのか。
応えに渋っていると、何か理解した様子ですたんっとルパンが私の元に身軽に飛び下りた。
「泥棒らしくオレ様に盗めってことね。では失礼します、お嬢様」
「え?…はっ!?」
にんまりと笑ったかと思えば、伸びた手が軽々と私の体を抱き上げる。
ひょろっとした腕をしているのに、簡単にプリンセスホールドされてしまった。
あまりにあっさりした動きに、呆気に取られて抗う暇もなかった。