My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
随分と濃い顔の知らない男。
床に膝を付いて、まるで崇めるように両手でそいつを示すジジ。
「この方はボネール姉さん。俺達囚人のボスだ。Gの容疑者としてもう三ヶ月も此処にいらっしゃる」
「……」
…………姉さん…?
「ジジちゃん、この子達があんたが言ってたエクソシスト? 可愛いじゃなぁい♡」
無精髭に衣装の上からでもわかる、筋肉の付いたゴツめの体。
それはどう見たって男のもんなのに、長い付け睫毛に赤く紅を塗りたくなった唇。
そして体をクネらせながら気色悪い言葉を並べるそいつは、否応なしに教団の料理長であるインド人を思い出させた。
…あれと同類か、こいつは。
「怪盗Gについてでしょ? アタシが教えてア・ゲ・ル♡」
立てた小指を真っ赤な分厚い唇に押し当てて、ぱちんとウィンクしてくる。
ぞわりと悪寒。
気色悪い。
「怪盗Gは人間じゃないわ…その名の通り"G"HOSTよ」
「…ゴースト?」
「奴についてわかっていることは三つ。イカれたコスプレと、犯行前日に必ず送り付けてくる予告状」
三本の指を立てて、ボネールとかいう女男が怪盗について説く。
「そしてGには肉体がない」
肉体がない?
……だからゴーストなんて言われてんのか。
「だから誰かの体使って泥棒すんのよ。そこの馬鹿警部がいくら捕まえたって、次から次に新しいGが現れんの」
「ッデタラメ言ってんじゃねぇボネール! そんなこと言って罪を免れたいだけだろうが!」
噛み付くように声を荒げたのは、今まで黙っていたガルマー。
その顔は怒りの中に焦りが見えた。
…恐らく薄々同じことを思ってはいたんだろう。
さっきの老人の言葉は的を得ていた。
それでも非科学的なことを認められないのは、警察としての意地か。