My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「おい」
「……」
「聞こえてんだろ」
「…っ」
「何石みたいに固まってんだ、こっち向け」
喉の奥から低い声を発する。
俺の声に反応した体はビクついて、一呼吸置くと恐る恐る振り返った。
頭に変な被り物はしていないものの、その服装はジジ達と同じ。ふざけたツナギ衣装をした──雪。
…どうしたらそんな状況になるんだお前。
「来い。此処に。今すぐ」
「ご、ご勘弁を…!」
蹴りを入れてヒビの入った硝子の前で、俺の手前を指差す。
途端に雪は顔を青くすると、頭を地面に擦り付けて土下座した。
何が勘弁だ、いいからサッサとこっちに来やがれ。
「神田がそんなメンチ切るから、雪さんが怖がってるでしょ! 全く…っ…雪さん、僕達咎めたりなんてしてませんから。大丈夫でした?」
「…アレン…っ」
呆れた目で俺を見たモヤシが、腰を下ろして柵の隙間から雪に呼びかける。
…オイ待てなんでモヤシ相手に"助かった"みたいな顔してんだお前。殴るぞ。
「怪我してません? 近くで顔見せて下さい」
「私は大丈夫…っごめんね、まさか来て貰えるなんて──」
「どうしたら全員仲良く独房行きになんだよ。ァあ?」
「いやー! ごめんなさいごめんなさい!」
モヤシの呼びかけに、ほっと笑顔でもたもたと近寄ってくる雪。
…の、襟首を隣から柵の隙間に腕を突っ込んでがしりと掴む。
そのまま力任せに引き寄せれば、びたりと雪の顔は硝子にへばり付けられた。
「だから乱暴は駄目ですって神田!」
「煩ぇ。人が心配して来てみればなんだそのふざけた格好は。おまけにコソコソ隠れるなんざ後ろめたさがなけりゃしねぇだろ」
「ち、近い痛い近い!」
硝子にへばり付けられた雪の顔面を至近距離で睨む。
俺じゃなくモヤシ相手に尻尾振ってんなよ。
マジで殴るぞ。