My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
「すみませんっ」
「気を付けろ」
慌てて顔を向けて謝ってくる女に、声を荒げる必要もないから手短に返す。
「……」
「…?」
返答はない。
目の前から退く気配もない。
俺を見上げたまま固まっている女に、何かと目で問う。
重なった視線に、女の顔が赤く色付いた。
……。
…面倒臭ぇな。
「…退け」
いつまでも退かない女に、仕方なくもう一度声をかける。
「あ、あらごめんなさい…っ」
「…あんたがガルマー警部か」
やっと我に返ったように慌てて退く体。
その向こうに側に立つ、さっきまで言い合っていたやつれた男に視線を変える。
どうやらこの女の父親が教団に連絡を寄越してきた、ガルマー警部という人間らしい。
そのガルマーはと言えば、何故か驚愕の顔で俺と女を交互に見ていた。
今度はなんだ。
「おい、あんたがガルマーかって聞いてんだよ」
「やん♡ オレ様? オレ様?」
返答のない男にもう一度、今度は低めに声をかければ傍に立つ女の視線がうざいくらいに刺さってくる。
その目はキラキラと輝いていて、嫌な気配しかしない。
すると急にはっとした男がズカズカと歩み寄って──
「どなた?」
「あ"?」
女を押しやって俺へと顔を寄せて凄んできた。
つい条件反射で睨み返す。
なんだいきなり喧嘩売ってんのかこいつ。