My important place【D.Gray-man】
第41章 枷
──サク…
雪を踏む。
「此処がパリの中央警察署か」
雪で積もった真っ白な道。
足跡を残してもすぐに降り積もる粉雪で消されていく。
そんな音のない寒さが肌に刺さるパリで、辿り着いた警察署を見上げる。
「すまない、ガルマー警部という人はおられるかな。お会いしたいんだが…」
入口の警備員に話しかけるマリの言葉を耳にしながら、建物を見渡す。
本当に此処に雪達が拘留されてやがるのか。
…大体、何をどうしたら独房なんざぶち込まれるんだよ。
「──今日も無理だッ」
ローズクロスを見せて警察署に案内されれば、すぐさま耳に飛び込んできたのは男と女の言い合いだった。
「約束破ってホント悪いと思ってる。でも仕事なんだよ、パーティにはお前一人で行ってきてくれ!」
「いッッつもそればっか! いい加減家庭を顧みないと、私も男を見つけてママみたいに出ていくわよ、パパ!」
「おまっ…何!? 男ができたのか!?」
「でき次第出てってやるわよ!」
「なっなにお~っ!!」
警察署内だってのに、親子喧嘩かよ。
うざってぇな。
頬のこけてやつれた金髪の男に、同じに金髪の女が噛み付いている。
周りは見慣れているのか、遠巻きに傍観している始末。
誰も止めようとしない。
「お…お取込み中すみません。警部にお客さんがいらしてますけど──」
「ホラお仕事ですってよ仕事バカさん! 院長先生には謝っといてあげるわ。言っとくけどコレ貸しだからね!」
「お前その言い方母親そっくりだぞ!」
恐る恐る声をかける警備員に、怒りで肩を上げたままの女が足早にこっちにやって来る。
警察署を出ようとしていたんだろうが、振り返って父親を睨み付けている目線は前方不注意。
「キャッ」
結果、ドンと俺の体にぶつかった。