My important place【D.Gray-man】
第9章 黒の教団壊滅事件Ⅲ
✣
「さて、とりあえず…寝る?」
窓の外の嵐の様子を伺いながら、腰を上げた月城が切り出す。
時刻は深夜、何時頃かも定かじゃない。
それでもこの無駄に縮んでしまった体は、確かに僅かながら疲労を感じていた。
いつもの体なら、これくらいで根なんて上げない。
科学班の野郎共、面倒な薬作りやがって。
「はい、どうぞ」
この病室には、月城が使っていた病院用ベッドが一つだけだ。
それを促してくる月城を見上げれば、さも当然の如く告げられた。
「その体じゃ私より大変でしょ。使っていいよ」
子供扱いしてんじゃねぇよ。
「必要ない。お前が使え」
「前回も譲ってもらったでしょ。今回は別に私、怪我してないし。もうほとんど検査も終えたから」
軽く両手を広げて月城が体を見せてくる。
俺の血が少なからず効いたなら、確かにあの脇腹の傷も塞がっていておかしくはない。
僅かな蝋燭の灯りに、広げた腕の各所に針を刺した跡が見えた。
そういや此処は無駄に機械が多い。
恐らく月城の体を雁字搦(がんじがら)めに繋いで、検査してたんだろう。
それがコムイの指示かはわかんねぇが、想像すると胸糞悪くなった。
「それは怪我に入らねぇのかよ」
「まぁ、これくらいなら」
裂いたシーツを巻き付けただけの怪我した足を指せば、頬を指先で掻きながら気にした様子なく頷く。
…それでも無傷じゃねぇだろうが。
「足が悪化したら、足手纏いになるだろ。怪我人は大人しく寝てろ」
「そんな、これくらい」
それでも引き下がろうとしない月城に、いい加減ベッドに放り込もうかと考えていたら、屈んで目線を俺に合わせてきた。
「恩を借りっ放しは嫌だから。私にも何かさせてよ」
その動作はやっぱり子供扱いされてるようでいけ好かなかったが、見えたそいつの顔は困ったように笑っていた。
…そんな顔で笑うんじゃねぇよ。