My important place【D.Gray-man】
第9章 黒の教団壊滅事件Ⅲ
背中を向けた神田と、対になるよう反対側に私も背中を向けて、早速と上の病院服を脱ぐ。
改めて病院服を手にしてまじまじと見れば、人の手形はやっぱり赤い血のようなものがついていた。
はっきりと綺麗に付いた手形は、綺麗過ぎて少し不気味にも見える。
ゾンビの群に襲われた時に付いたのなら、もっと雑な跡になりそうだけど…。
「大丈夫かな…」
血が服に滲んで、背中に付いてなければいいけど。
それを確認しようと、首を捻ってなんとか自分の背中を見る。
薄暗い蝋燭の灯りだけを頼りに、なんとか見えた自分の背中。
その地肌に薄らとそれは浮かんでいた。
「な、に」
それはさっき脱いだ、病院服の背中に付いていたものと同じ。
人の手形のような、黒い跡だった。
「どうした」
私の声で不信感を感じ取ったのか、背中を向けたまま神田が問いかける。
「う…ううん。なんでもない」
多分、強めに誰かの手がぶつかったんだろう。
それでできた軽い痣かもしれない。
うん、きっとそうだ。
そう思い込んで頭を横に振る。
じゃないと嫌な考えに到達してしまいそうで。
「もういいよ」
服を着替えて神田に声をかける。
視界に映る、床に放った赤い血の手形が付いた病院服。
それを見ていたくなくて、ぐしゃりと手で丸めて隠した。