• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第9章 黒の教団壊滅事件Ⅲ



「お前、」

「…いひなり、なんれふか」


 ぼうっと昔のことを思い出しながら床を見つめていると、横から伸びた小さな手が徐に頬をむにっと掴んできた。
 …いきなりなんですか。

 ラビといた時に抓られた程の強さはない。
 ただ、間近にある神田の顔は訝しげな表情をしていた。


「…なんでもねぇよ」


 その口が開いて何か言おうとしたかと思えば、それは言葉にならず顔を逸らされた。
 …なんだろう。


「あ」


 離れていく神田の小さな手を見返していると、不意にさっきのことを思い出した。


「なんだよ」

「うん…服、着替えたいなと思って。この背中、気持ち悪いし」


 首を捻って背中を見れば、やっぱり赤い人の手形はついたままだ。


「此処なら代えの病院服あるから。着替えてもいい?」

「好きにしろ」


 神田の了承を得て、バリケードとしてドアに立て掛けた棚から新しい病院服を取り出す。
 ついでに小さな灯りとして、見つけた蝋燭に火を灯した。


「あっち向い」

「言われなくても興味なんかねぇよ」


 私の言葉を遮って、さっさと壁を向いて神田が座り込む。

 わかってるけど…わざわざそんな言い方しなくても。
 わかってますけど。
 興味持たれたら持たれたで、反応に困りますけどっ。


「…どうも」


 なんて言えるはずもなく。
 結局黙って着替えることにした。
 …くそぅ。

/ 2637ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp