My important place【D.Gray-man】
第9章 黒の教団壊滅事件Ⅲ
「お前、」
「…いひなり、なんれふか」
ぼうっと昔のことを思い出しながら床を見つめていると、横から伸びた小さな手が徐に頬をむにっと掴んできた。
…いきなりなんですか。
ラビといた時に抓られた程の強さはない。
ただ、間近にある神田の顔は訝しげな表情をしていた。
「…なんでもねぇよ」
その口が開いて何か言おうとしたかと思えば、それは言葉にならず顔を逸らされた。
…なんだろう。
「あ」
離れていく神田の小さな手を見返していると、不意にさっきのことを思い出した。
「なんだよ」
「うん…服、着替えたいなと思って。この背中、気持ち悪いし」
首を捻って背中を見れば、やっぱり赤い人の手形はついたままだ。
「此処なら代えの病院服あるから。着替えてもいい?」
「好きにしろ」
神田の了承を得て、バリケードとしてドアに立て掛けた棚から新しい病院服を取り出す。
ついでに小さな灯りとして、見つけた蝋燭に火を灯した。
「あっち向い」
「言われなくても興味なんかねぇよ」
私の言葉を遮って、さっさと壁を向いて神田が座り込む。
わかってるけど…わざわざそんな言い方しなくても。
わかってますけど。
興味持たれたら持たれたで、反応に困りますけどっ。
「…どうも」
なんて言えるはずもなく。
結局黙って着替えることにした。
…くそぅ。