My important place【D.Gray-man】
第9章 黒の教団壊滅事件Ⅲ
「ぷ、くく…っ」
「なに笑ってんだテメェ…」
「いや、だって…っ緊張感ないなぁって」
お互いにお腹の虫鳴らして。
そのタイミングの良さに思わずおかしくなった。
神田の睨んでくる目も気にせず、つい笑ってしまう。
「…チッ」
そんな私に神田は嫌そうな顔をしたけど、それ以上に照れがあったのか、何も言わなかった。
「──ねぇ、神田」
「…んだよ」
お互いに壁に背を預けて、隣同士座り込んだまま。
「もしさ、この教団でまともな人が私達だけだとして…もし、今ご飯が食べられるなら。もしもだよ、最後の晩餐として。何が食べたい?」
「縁起でもないことを聞くな」
「ただの世間話だよ、世間話」
笑うとなんだか、少しすっきりした。
本当に私達だけだとしたら、最悪の状況なんだけど。
その気持ちを払うように、気付いたら明るく話しかけていた。
そういえばこんなふうに神田と雑談したことなんて、なかったな…。
「そんなこと考えたこともない」
だけど返ってきた言葉は、なんとも神田らしいもの。
「じゃあ、考えてみたら?」
再度問いかければ、面倒臭いと目が語る。
「……蕎麦」
だけど暫く考えるように沈黙した後、ぽつりと彼が好んで食べている(と、以前ラビから聞いた)料理を挙げてくれた。
「ぶふッ」
「おいテメェ今なんで笑った」
「いえなんでも」
いえ、なんか素朴でいいなって思っただけです。
なんか笑いのツボに入ったとか、そんなんじゃないです。
「じゃあテメェは何食うっつーんだよ」
口を押さえたままそっぽを向いていると、今度は神田に問いかけられた。
睨み聞いてくるその問いに、ふと思考が止まる。
私が最後に食べたいもの?
…確かに考えたことなかった。
「うーん…そうだなぁ…」
ジェリーさんの料理はなんでも美味しいし。
和食も洋食も中華もイタリアンも。
まぁ…でも。
「なんでもいいよ。誰かと一緒に、食卓を囲めるなら」
膝を抱いたまま、病室の床を見つめて呟く。
大勢じゃなくていい。
一緒にいるだけで、いつもよりご飯が美味しく感じられるような。そんな誰かと一緒に食卓を囲めたら。