My important place【D.Gray-man】
第9章 黒の教団壊滅事件Ⅲ
「…放せ」
「あ、はい」
体を解放すれば、すとんと床に着地する。
「とにかく何処か隠れられそうな場所を見つけよう」
「…また隠れんのかよ…」
面倒臭そうに溜息をつく神田のその気持ちはわからなくもないけど、子供と元病人とじゃ体力もそろそろ尽きてくる。
それこそゾンビ化した皆の前に体力なんて尽きたら一網打尽だ。
私達の限界が来る前に、安心して休める場所を見つけないと。
ゾンビ化人間に出会わなさそうな場所は──
「…あ。」
そうだ。
あそこなら。
「よかった。誰もいない」
恐る恐る部屋の中を伺う。
誰の気配もない其処に、ほっと体の力が抜けた。
「安心すんのは、ここを塞いでからだ」
「うん」
神田の呼びかけに、一つだけのドアへと向き直る。
此処は私が入院させられていた検査用の病室。
ゾンビ化事件を知らない間に此処を歩き回っていたけど、出会ったゾンビはマリだけだった。
その予想は当たって、病棟付近にそんなにゾンビの姿は見当たらなかった。
「よし。これで一晩は保つかな」
「ゾンビの群が襲って来なけりゃな」
ベッドや棚や体に繋げていた機器や、その場にあった物全部を使ってバリケードを作る。
そこまでしてやっと、今度こそ一息つけると壁に背中を付けて座り込んだ。
ぐきゅるる~
途端、その場にそぐわない酷く間抜けな音が響く。
…私の、お腹から。
「…お前」
「すみませんッ」
思いっきりお腹の虫を鳴らした私に、神田の痛い程の視線が向く。
思わず恥ずかしさで、抱いていた膝に顔を埋めてしまった。
これはタイミングが恥ずかし過ぎる…!
「なんだよ、腹減っ」
ぐぅぅ~
二度目の音は、隣から。
「…神田?」
「っ仕方ねぇだろ、こんな時間なら」
目を向ければ、隣にいた小さな頭が瞬時にそっぽを向いた。
耳、ちょっと赤いですよ。