My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「ル、ル、ルル…ル…」
「どしたのバズ。大丈夫?」
そんなル連呼したって狐なんか寄ってや来ませんよ。
「ルルルパン!? ってあの!?」
「まじか…手配書と同じ顔してらぁ…」
あ、そっちね。
巨体をぷるぷると震わせて大声を上げるバズに、調べ上げた手配書の画像と見比べながらジジさんが静かに驚きの言葉を漏らす。
本物だったんだ、ルパン三世だってのは。
まぁさっきの腕前を見れば納得はできるけど…。
「すげぇ…! 本物初めて見た…!」
「野郎に喜ばれてもなぁ…オレ様嬉しくねぇんだけどよ…」
興奮するバズを前に、ホテルの椅子に片足を膝の上に乗せて行儀悪く座るルパンは全く興味のない表情。
私の時と反応が違うなぁ…クロス元帥と一緒で、同性には冷たいのかな。
「それよりコイツらと組むってのは本気かよ、ルパン。俺ァ乗り気がしねェ」
「まぁそう言うなって。今回は五ヱ門がいねぇんだしよ~」
五ヱ門?
あ、聞いたことがある。
ルパン一味の一人だったっけ。
確か日本刀の使い手だとか…日本に馴染みがあるって言ってたのは、本当だったらしい。
そしてホテルの壁に凭れて立つ、真っ黒な人。
けぇっと嫌そうに悪態突く彼の名は、次元大介。
ルパンの相棒で銃の名手だと聞く。
ルパンに比べると、頭は少し固いのかも。
あの後、結局ルパンの誘いに乗らざる終えない形になって、私は彼らを連れて渋々借りたホテルへと戻ってきていた。
「敵の敵は味方って言うだろ? それに雪は仲間を怪盗Gにやられてんだし」
「えっ」
サラリと出てきたルパンの発言に思わず喰い付く。
怪盗Gにやられた? ゴズが?
「それどういうことっ? ゴズのこと?」
「あ、やっぱり気付いてなかったのね」
「"アレ"見て気付かねぇたァ、素人さんだな」
目深に被った帽子の隙間から見てくるその目を思わず見返す。
素人で悪かったですね。
「おい次元、そんなに冷たくしてやんなよ。素人なら怪盗Gも良い勝負してらぁな」
「…どういう意味か、説明してもらおうか」
ジジさんの言葉に、ルパンの目が再度私達に向く。
そこにはよく見せていた、真意の掴めない笑顔なんて浮かんでいなかった。