My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「それにオレは調査の対象なんだろ? 組んだ方が手っ取り早いと思わねぇ?」
「……」
それは確かに一理ある。
でもそれは一種の賭けだ。
相手が自分に害を及ぼす者なら、危険が生じる。
ジジさんやバズの意見も仰がないと。
一人でなんて決められない。
…でも。
「……」
当たり前に彼の左手首に収まっている、ユウの数珠を見る。
あれを取り返すのは、そう簡単にできそうもない。
でも私には絶対譲れないものだ。
「……わかった」
小さく溜息をついて、肯定の言葉を吐き出す。
…仕方ない。
「今なんてった?」
「わかったって言ったの。ちゃんとした理由があるなら、協力してあげないこともない」
「ほーんと! 話のわかる子ってオレ様大好き♪」
ああチャラい。
ぬふふ♪と独特の含み笑いを見せながら、毛深い両手を組んで顔にくっ付ける。
そうやってスキップで歩み寄ってくる彼。
がしっ
の、襟首を掴む。
「…雪ちゅわん?」
「な、訳あるかーッ!!」
「おぅえええ!? ぶぶっ!」
そのまま渾身の力で両手でつかんだ襟首を、背中を向けて放り投げる。
所謂背負い投げ。
相手が曲者なら、正攻法なんて効果ない。
目には目を、歯には歯を。
嘘っぱちな相手には嘘っぱちな方法を。
放った体は呆気なく飛んで、頭から雪の地面に衝突した。
起き上がる前にその背中に馬乗りになって、腕を掴んで背中に付くくらいに折り曲げる。
「い! イタイイタイ! 折れるって雪ちゃーん!!」
「人の名前大声で呼ぶな! いいから返してそれ!」
いくら朝とは言え、ぎゃんぎゃん喚いてたらギャラリー集まってくるから!
折り曲げた手首に通された数珠に手を伸ばす。
その人の悲鳴が大き過ぎたからか、取り返すことに必死だったからか。
サク、
雪を踏む微かな音に、私は気付かなかった。