My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「怪盗Gのことは追ってるけど、貴方も調査対象の一人だし。そんな人と組めない」
「それってオレに興味持ってくれたってこと? 雪ちゃん」
「違イマス」
だからいちいち言動が軽い。
というかいい加減手を離して下さいっ
「とにかく! 貴方と組む気なんてない。私は私で怪盗Gを追う」
手を振り払えば、呆気ないくらい簡単に握っていた手は離れた。
相変わらず残念そうな素振りは全く見せず、にんまりと笑う口元がにぃっと歯を見せる。
…何その笑み。
「これなーんだ」
にひ、と笑いながら目の前に翳される──…えっ
「ッ!」
「おっと」
目の前にぷらんっと垂らされたのは、私の手首にあったはずのもの。
臙脂色の数珠。
反射的に奪おうとすれば、それより早く数珠を持った手を退かれた。
虚しく空を掴む私の手。
なんで…いつの間に…!
「あ、やっぱりこれ大事なモン?」
「なんで…ッ」
「ちぃーっとばかり観察してりゃわかる」
会って間もないのに、どんだけの目利き持ってんの。
只者じゃないとは思ってたけど、結構な曲者なのかもしれない。
「返して!」
「そんなに大事なモンなら、値打ちあんのかなぁコレ」
「そんなものないから!いいから返してよ!」
私の大事なもの。
絶対に盗られる訳にはいかない。
立てた人差し指でくるくると数珠を軽く回す動作に、思わずカッとした。
そんなふうに扱わないでッ!
「こんの、返せ!」
「っとと…ぉわっ!?」
身を低くして足払いをかける。
ひらりとかわす身軽な足は想定内で、地面に手をついた際に手にした雪の塊をその顔に投げつけた。
目潰しで視界を遮られた一瞬の隙に、体を跳ねて起こすと同時に足を回し上げる。
「イデッ!」
ゴィンッ!と回し蹴りはひょろっとした頭に入った。
ふらつくその人の手に齧り付いて数珠を奪い取る。
やった…!