My important place【D.Gray-man】
第9章 黒の教団壊滅事件Ⅲ
「…やっぱり」
教団の外に続く出入り口。
其処に向かう為には、この大きな廊下を通らないといけない。
だけどやっぱり其処には大量のゾンビ化人間が徘徊していて、とても無傷で通れそうにはなかった。
廊下の大きな柱の影から様子を伺いつつ溜息を零す私の横で、神田が眉間に皺寄せて怖い顔をしてる。
いつもそんな怖い顔してたら、いつかその眉間の皺取れなくなるからね…。
「クソっ」
「ちょ、待って待って神田ッそんな体で出て行ったら餌食になるだけだからッ」
悪態をついたかと思えば、徐に柱から出ようとする。
え、何やってるのっ。
咄嗟に慌てて、小さな体を後ろから抱き上げ止めた。
「放せッ此処から出ねぇと死ぬだけだろうがッ」
「だから死んでないってばッ」
皆生きてるから!
勝手に殺しちゃ駄目だから!
「っこんな所で止まれねぇんだよ…ッ」
憎々しく呻く神田の言葉は、いつも以上に感情が込められているように聞こえた。
止まれないって、どういう意味だろう。
気になったけど、いつ見つかるかもわからない、小声でしか声を張り上げられないこんな場所でそんなこと問いかけることもできない。
「! そうだ」
腕の中で暴れる神田を抱えたままハッとする。
「聞いて、神田」
「あ? なんだよ」
「薬で皆ゾンビみたいになってるけど、所詮は人間でしょ」
怪訝な視線を向けてくる神田を見下ろす。
バイオハザードのゾンビとは違う。
此処にいる皆は薬で理性は飛んでるけど、体は普通に生きてる人間。
「今は元気に活動してるけど、時間が経てば体力が切れるかもしれない」
ワクチンを打たない限り、元には戻らないらしいけど。相手は人間だから、体力は無尽蔵な訳じゃない。
いつかは疲れが出るはず。
「その時を狙えば外に出られるかも」
「その時っていつだよ」
「わからないけど…とにかく今は深夜だし。外も凄い嵐だし。一晩、待った方がいいかも」
窓の外に映った空は真っ黒で、横殴りの雨が窓ガラスを強く打ち付けていた。
その光景に神田も納得せざる終えなかったのか、渋々小さな体は大人しくなった。