My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
誰だったか、気にはなるけど今は考え込む時じゃない。
すぐに頭を切り替えて目の前の人物に集中する。
「じゃあ名前聞かねぇとな。Dites-moi?」
片手を差し出して問いかけてくる。
少し気取った仕草。
躊躇はあったけど、名乗ったところで素性がバレる訳ないし…名前くらい問題ないか。
ここは下手に嘘をつくのはやめよう。
「私は──」
タッと何かが雪を蹴り駆ける音。
はっとしてその人と同時に私の視線は動いた。
「侵入者だ!」
「怪盗Gか!?」
「逃がすな、捕らえろ!」
其処には、警察犬であろう大きな犬を何頭も連れてこっちに向かってくる警察の姿。
げ。
昨夜の騒動でまだ警備してたんだ。
「あらー、見つかっちゃった」
「あそこだ!」
「捕まえろー!!」
慌てた様子なく肩を竦める彼の真っ赤なスーツが、目印になっているようで真っ直ぐに迷わず向かってくる警察の方々。
見つかったのって貴方の所為じゃないんですか…!?
「んじゃ、とりあえず逃げっか」
「えっ」
誘うような言葉に思わず凝視すれば、ぱちんと綺麗なまでに慣れたウィンクを返された。
「レディの名前も聞かずに、はいサヨナラはねぇだろ」