My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「──うーん………何もない」
ひっそりと静まり返った公爵の屋敷の庭に、そっと侵入して探索。
だけどゴズの手掛かりらしきものは何もなく、誰の足跡もない真っ白い絨毯のような雪の上には私の靴跡だけがぽつぽつと残されていく。
「イノセンスが関係してるのかなぁ…」
怪盗G、バズの行方、謎の二人組。
気になる事柄を頭の中で整理しようとしても、答えは見つからないまま。
こうなったら思い切って公爵のお宅を訪ねてみるかな…。
でも昨日の今日だと誰に対しても疑心暗鬼になってそうだし…取り合ってもらえないかもしれない。
ううん…どうしよう…。
──サク…
腕を組んでううーんと首を捻る。
そんな私の背後で、昨日聞いたことのある音が聞こえたのと。
「その"いのせんす"ってお宝の名前?」
聞いたことのある声を投げかけられたのは、同時だった。
「──!」
驚き振り返る。
気配はなかったのに。
其処には一人の男性が立っていた。
「はーじめまして。不法侵入じゃねぇの? お嬢ちゃん」
にこにこと笑って軽く手を振ってくる。
細身の体に真っ赤なスーツを身に纏った男性。
それは知らない顔だった。
でもその少し巻き舌っぽい声には聞き覚えがある。
「…そういう貴方もじゃないんですか」
この男性の声…昨夜の謎の二人組のものと同じだ。
思いもかけない人の登場に警戒しつつも、内心は歓迎していた。
この人が行方不明のバズと関係している可能性もある。
「え? オレ此処の住人よ? なぁんで初めましてのお嬢ちゃんがオレのことわかんの?」
「……」
しまった。
私がこの人のことを少なからず知ってること、気付かれた。
…というか白々しい程に笑うこの顔は、わかっててわざと言ってる気がする。
お猿さんみたいなとぼけた顔してるのに、策士だなこの人。
「そんな怖い顔すんなって。折角の可愛い顔が台無しだぜ」
「見え透いたお世辞は結構です」
思わず睨み返す。
こういうチャラついた人は好きじゃない。
チャラつくというより、砕けて話しかけてきてるけど真意は巧みに見せていない。
初対面なら色々と疑うべき性格だ。