My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「もう飯行くぞ。任務に遅れる」
「あ、うん」
急かされるままにドアに向かう。
開いたカーテンの向こうから差し込んできているのは、明るい朝日。
すっかり陽は昇ったらしい。
もうすっかり朝かぁ……朝?
「ち、ちょっと待ってユウ! 私が先に出るから!」
「あ?……何やってんだお前」
ドアノブを掴んだユウを慌てて止めて、ドアの前を陣取る。
そろ~っと僅かに開けたドアの隙間から、外の廊下を伺い見る。
よし、誰もいない。
「OK、出ていいよ今のうち」
「なんでコソコソ出る必要があんだよ…」
呆れ呟く声を無視して、その手を引いて素早く廊下に出る。
マリとまた出くわしたら困るからね。
主に私が。
「なんとなくね、なんとなく。気分?」
「……」
あ。
適当に愛想良く笑って返せば、面倒臭ぇコイツって顔された。
私の言葉を信じちゃいないんだろうけど、ツッコんでこないのは恐らくもう色々諦めてるからだ。
なんだろう…若干複雑。
「それより早く食堂行こう。お腹減った」
「…はいはい」
先を歩きながら、廊下の窓ガラスに映った自分の姿にふと目を止める。
そこに映っている私の傍には、ユウ以外の人影なんて見当たらない。
額に聖痕もないし、いつもの私の姿のまま。
いつも通り。
ユウが部屋を出ていく前と、何も変わらない。
でも、私の中に確かに在る"ノア"という存在。
「……」
任務中にしっかり考えて、ユウに納得して貰えるだけの言葉をまとめよう。
ノア化しなくたって伝えるんだ。
ちゃんと伝えて、ありのままの私を見てもらって。
…そして、受け入れて貰えたら。
「…って駄目駄目」
そんな微かな希望を一瞬抱いて、慌てて首を振って追い出した。
そういう期待はやめておこう。
死亡フラグ死亡フラグ。
とりあえず第一に優先すべきは任務遂行!
伝える前に戦場で帰らぬ人になんてなったら元も子もない。
「よし、任務頑張るぞっ」
「怪奇現象にビビってヘマすんなよ」
「…りょーかい」