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My important place【D.Gray-man】

第39章 夢現Ⅲ



「なんで…ハグくらい、いいじゃんか…」


 さっきユウだって抱きしめてきたじゃんか。
 なのになんでこのタイミングで拒否。
 嫌がらせ?


「んな戦場に行くような顔でせがまれても、嬉しくもなんともない」

「へ?」


 そんな顔してたの私。
 いやまぁ、ある意味そうだけど。
 任務先でAKUMAと遭遇なんてよくある話だし。
 そうなれば完全なる戦場だし。
 こんなこと死亡フラグ自ら立ててるようなもんだけど。

 ほらよくある「俺これが終わったらプロポーズするんだ」的なね。
 帰ってきたら伝えるんだ的なね。
 素敵に笑顔でそんなことを言ったが最後、戦場でそのまま帰らぬ人になる的なね。

 でも仕方ないでしょ今すぐ伝えられないし。
 大体、ゆっくり話す時間だって今はないし。

 いいじゃない戦場に行く前にその体温を噛み締めたって。
 死亡フラグくらい、へし折ってみせますから!


「これで最後みたいな顔すんな。そんなもの、いつでもしてやれるだろ」

「……」


 …だからそう思えないから頼んだんだけど。
 でもそんなこと言えないから黙り込めば、溜息をついた体が歩み寄った。


「任務から帰ってきたらしてやる」


 目の前に立つ体。
 でもその腕は触れてくることなく、代わりに屈む顔が近付く。
 …あ。


「それまではこれで我慢してろ」


 見上げた私の唇に重なる、ユウの唇。
 ふわ、と軽く押し付けられる柔らかな体温。
 ついでに抱きしめてくれたって…とは思ったけど、キス一つで身に浸みる温かさに言葉は呑み込んだ。

 これはユウなりの渇だ。
 だからちゃんと帰ってこいって言ってる。

 触れるだけのキスだけど、いつもより長めのキス。
 体全体で感じるものじゃないのに、陽だまりの中にいる温かさと同じだった。

 実感するようにそっと目を閉じる。
 感じるのはただ一つ。


 ユウの体温だけ。


「……」


 …ああはい、わかったわかりましたよ。
 死亡フラグなんて全部へし折ってユウの所に帰ってくるから。


「いいな」

「…りょーかい」


 ゆっくりと離れる顔。
 真っ直ぐに見下ろしてくる視線を受け止めて、小さく頷いた。
 …帰ったら伝える前に、とことんハグしてもらうんだから。

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