My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「"怪盗G再び。ピジョン・ブラッド盗まれる"、か」
大きく取り上げられた記事を読み上げたジジさんが、丸めたその新聞紙を机にばさりと放る。
昨夜の事件は怪盗Gの勝利で終わりを告げた。
…ガルマー警部また怖い顔してそう。
「それより問題はゴズだろ! 畜生、あいつ何処に消えたんだよ…!」
何気ないジジさんの呟きに反発したのはバズだった。
悔しそうに机に大きな拳を叩き付けて呻る。
仲間思いのバズだから、ゴズのことを心底心配しているんだろう。
昨夜。
突如事件中に消えたゴズは、皆でどんなに捜索しても見つからなかった。
何処かで迷子にでもなったかと思いもしたけど、ジジさんがゴズに預けていた通信ゴーレムだけ発見されたことを考えると…何かしら事件に巻き込まれたのかもしれない。
それは怪盗Gによるものなのか、はたまた別の無関係な事件に巻き込まれたのか。
ただ、怪盗Gが現れた途端にゴズと連絡が途絶えたってことが引っ掛かる。
「嘆いていても仕方ないよ、バズ。とにかく捜索第一。別行動で捜そう」
大きなバズの背中を軽く叩いて荷物を背負う。
一晩借りたホテルのドアへと向かえばジジさんに止められた。
「待て雪。単独行動は危険かもしれねぇぞ。雪が見た謎の二人組ってのも気になるし」
「朝なら夜より危険はないですし、大丈夫です。これでも大の男くらい負かせられますから」
「…流石筋肉馬鹿」
「馬鹿って言わないで下さい馬鹿って」
肉体馬鹿と一緒ですそれ。
「それに別れて捜した方が効率が良い。今はゴズの命優先です」
「そりゃまぁ…そうだけどよ」
「通信ゴーレムも持っていきますから。お昼には戻ります。ジジさんはバズと一緒に捜して下さい。バズ、ジジさん頼んだよ」
「…わかった」
こんな状態のバズは一人にしない方がいい。
冷静なジジさんが傍にいればストッパー役になる。
口ではバズに頼みながら、内心ジジさんにバズを託してホテルを出る。
一体ゴズは何処に消えたのか。
手掛かりなんて何もないけど、あるとしたら…一つだけ。
「現場かな…」
あのド・モンヴィル公爵の屋敷に何か手掛かりが、残されているかもしれない。