My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「話したいこと?」
「うん」
どう伝えたらいいのか。
どう切り出せばいいのか。
それはまだよくわからない。
だから、
「…任務から帰ってきたら、話したい」
ちゃんと伝えたいことをまとめて、それから口にしよう。
ユウも今日は朝から任務が入ってるし。
伝えるなら時間に急かされず、ゆっくり言葉を交わしたい。
「……それは例の伝えたいことか」
「…うん」
少ない言葉だけで悟ったらしい、顔だけ振り返っていたユウがその体も向けてくる。
核心を突く言葉に、一度だけ頷いてみせた。
「わかった」
するとその真っ黒な目はじっと私を見つめて、あっさりと承諾した。
こっちの体の力が抜けるくらい、あっさりと。
「なら任務が終わったら、一番に俺の所に来い」
「…うん」
もう一度、頷く。
いつか絶対に伝えるって決めていたけど…こうしてもう後戻りのできないところまでくると、やっぱり不安は募る。
臆病な私が顔を出す。
…話したら……受け入れてもらえるのかな…。
「…あの、…ユウ」
「なんだ。まだ何かあるのか」
「ぃゃ…その…」
もごもごと口篭りながら、恐る恐るその顔を伺う。
こういうこと、言うの照れるけど…。
今のユウとのこの関係が、もしこれで"最後"になってしまったら。
「…もう一回、ぎゅってして下さい」
「…は?」
そう思うと、その温もりに浸りたくなった。
怖がってばかりじゃない。
ユウならノアのことを伝えても、変わらず私を私のままで見ていてくれるかもしれない。
エクソシストもファインダーも関係ない、私自身を見て好きになってくれたユウなら。
…でもそれは決して"絶対"と言えることじゃない。
もし、私を見る目が変わってしまったら。
"今"のこの関係は終わってしまう。
浸っていたい。
"今"感じられている、私の陽だまりのような場所。
忘れずにいたいから。
だから…最後にもう一度くらい抱きしめて貰っても、いいよね。
「嫌だ」
なのに返ってきた言葉は、気持ちいいまでにきっぱりとした否定だった。
…なんですと。