My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
お互いの間にできる沈黙。
視界に入ってくるのは、近くにあるユウの真っ黒な髪。
…石鹸の匂いがする。
トレーニング後にシャワーでも浴びたんだろうな。
それから目線を下げれば、引き締まった瑞々しい肌。
……。
……………。
……………………えいっ
「っ!?」
そのまま首を捻って、張りのある肌にがぶっと噛み付いてみた。
するとビクッ!と気持ちいいくらいの大きな反応が返ってくる。
「おま…ッ何すんだ急に!」
「あ、付いたね」
「はっ?」
「跡」
勢いよく顔を離してくるユウに構わず、噛み付いたその首筋を確認する。
昨日の甘噛みより強めに噛んだから、今度はすぐに消えずに薄らと歯型が付いた。
「これで虫除けになるかな」
今日一日くらいは。
昨日はなんだかんだ、ユウの体に虫除け跡は付けられなかったから。
満足げに笑い返せば、忽ちユウの表情は呆れたものに変わった。
「ったく…驚かせんな」
「あれ。ユウもビビることあるんだ?」
「お前な…」
うん、いつものユウだ。
普段の空気に戻ったことにほっとして、更に笑えば溜息混じりに頭をくしゃりと撫でられる。
「…飯行くぞ」
「うん」
解放された腕の中から抜け出す。
この自分でも答えの出ない現象を、どう説明すればいいのか。わからないけど…やっぱり私の中のノアは消えた訳じゃない。
それは確信できた。
「ユウ」
ドアに向かおうとしていた背中を呼び止める。
振り返るその顔に、どんな顔をしたらいいのかわからなくて。とりあえず、へらと笑ってみせた。
「あのね…話したいことがあるの」