My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「寝言は寝てから言えよー」
「……」
「…おい? 本当に寝ちまったのか?」
ハイハイと始終呆れ口調でいたガルマー警部の言葉に、始終余裕ある声で反応していた怪盗Gが不意に黙り込む。
やっと自分の状況でも悟ったのか。
パリィンッ!
そんな怪盗Gの意識を別に向けたのは、またガラスが割れるような音だった。
別の屋敷の小窓から飛び出してきた──…あれっ!?
「かっ…」
怪盗G!?
思わず出そうになった声に、咄嗟に自分の手で口を塞ぐ。
危ない、真下には謎の二人組がまたいたんだっけ。
見つからないようにしないと。
でもなんで。
「言ったでしょう、警部殿! ワタシは捕まらないと!」
「畜生、またか…!」
ガルマー警部の目の前には拘束されたコスプレ姿の怪盗Gがいる。
なのに屋敷の小窓から飛び出してきたのは、また別の同じコスプレをした怪盗Gだった。
声は若干違うように聞こえる。
体格も然程大柄じゃない。
ということは、同一人物ではなさそうだけど…大体捕まってる怪盗Gがいるんだから、同一人物な訳がない。
じゃあ集団で盗みをしてる怪盗ってこと?
怪盗Gは一人じゃなかったんだ。
「どうせお前も怪盗Gなんてふざけた犯罪集団の仲間だろーが! あいつもひっ捕らえろ! 絶対逃がすな!」
「はーっはっはっは! さらば!」
身を翻して粉雪舞う夜空の中、屋根伝いに逃げていく怪盗G。
それを追いかける警察達。
逃げ去る怪盗Gの脇に抱えられているのは、ルビーが入った小さな金庫。
…あれ?
最初の怪盗Gを捕まえた時に、それは警察が押収していたのに…なんで?
「……」
一体何がどうなっているのか。
夜の闇に消える怪盗Gを追う警察達。
一気に騒がしさが遠くなる。
そんな中、木の枝の上に残された私は不可解な一連の出来事に唖然としていた。
単独犯じゃない、複数犯。
なのにいつ狙いのルビーを手渡したのか、全くわからない。
大体仲間なら、捕まってるあの大柄な怪盗Gを見捨てるはずないだろうし。
後で助けるつもりなのかな。
「…謎」
それは全て"謎"だった。