第3章 そういうとこ
「雅紀の、存在価値?」
「うん。嵐における、俺ってなに?」
俺の深刻な状況も知らず、杏奈はキョト~ンとして、おっきな目をパチパチ。
…くぅ~っ、可愛いな、こんちきしょう!こんな状況なのにっ。
「そんなの、決まってるじゃん」
「な、なに、なにっ?!」
当たり前じゃん、みたいな杏奈が天使みたいに見える!(いや、俺にとっては天使同然なんだけどっ)
どんなスゴいこと言ってくれるのって期待満々の俺はさらに前のめりになって…。
「ちょっ、近い!近すぎっ!」
「イテッ!」
両耳を掴んで押し戻すんだもん。ガチで痛いっす、耳…。
「まったくぅ…」
半分呆れた顔で笑う。あ。この顔スキだな~、俺。
「…そういうとこだよ?」
「……えっ?」
聞き逃した?いや、『そういうとこ』って…。
…どこ?ど~ゆ~とこ!?
また若干前のめりになって俺が聞き返そうとしたら、今度は先手を打って杏奈の手が伸びてきて
「元気なトコ」
鼻を指先でチョン
って。
「ええええ――…?」
雑誌の取材とかでも、他のメンバーの長所ってどんなとこ?って質問よくあるんだけど、俺のはほとんど『元気』。
ええ、そりゃ確かに元気だと自分でも思うよ。ポジティブシンキングがモットーだよ。
だけどさ。
フツーに凹むことだってあるでしょうが。俺だって人間だよ?
「雅紀は嵐のムードメーカーじゃん」
「いやいや、あのさ、そういうんじゃなく…」
「あ、嘘。『トラブルメイカー』(笑)」
「コラ」
ねー、俺ってそんなん?それだけ?
てことは、落ち込んでる今って……価値ZERO?
「…ハァ」
ほらー。ため息でちったよ。