第1章 「こっち向いて、君」
「てめぇ、なに泣かせてんだよ!!」
「はぁ!?」
「お前減給。減給も減給!!!時給1円!!」
「やめますよそれ!!!!」
「店長…どこからいたんですか?」
「今だけど?お前なにされたんだよ、なんで泣いてるんだよ。風間、お前だからの事譲ったのに、なんで泣かせてるんだよ!!」
「落ち着いてください!違いますって!どちらかというと、泣かせたのは店長ですよ!」
「ホワイ!!??」
急に騒がしくなる。と言ってもわーわー言っている斗真のせいなのだが。
なんとか彼を落ち着かせ、と俊介は事情を説明した。
「つまり、は風間が好きだけど、両思いになっても嬉しくなくて、申し訳なくて泣いた、と」
「はい」
「なんで俺のせいになるの?」
「…店長が意地悪しないから!変に優しいし、気持ち悪いんです!!もっと、もっと構ってくださいよ…私、店長と馬鹿やるの好きなんですよー…」
また涙が溢れてきて、は膝に顔を埋める。
斗真は少し慌てた様子での頭を撫でてやると、俊介に目配せをした。俊介は了解、と言わんばかりに頷き、その場を去る。
「なー、ごめんな?泣かないでー」
「うるさっ…もっ…ばかぁ」
「俺だってお前にちょっかい出したかったよ。でも、怖かったんだよ…」
「なにがですか?」
「お前に拒否されるのが怖かった。だから、自分から距離置いたんだよ…。俺、お前がここに入ってから、ずっと好きだったんだからな?だから、風間に嫉妬してたし、お前に意地悪もしてた。俺、ガキだからどうしていいかわかんなかったんだよ」
次々に出てくる告白に、の涙は止まっていく。そして、先ほど俊介が気持ちを打ち明けてくれた時よりも、喜びを感じていた。
「あの日、お前押し倒して、もっと先の事もしてやろうかと思った。焦ってた。風間にとられんの嫌で。でもこんな事してもが傷つくだけだから…ごめん」
「私、店長が苦手だって思ってました。いつも意地悪するし、私の扱い酷いし…でも、それがそのうち当たり前になっていくうちに、楽しくなって…風間さんを好きだった気持ちは本当です。でも、それ以上に、いつの間にか店長の事好きになってました。だから…」
「だから?」