第5章 本領発揮
「お礼なら、その方に言ってください。夜神さん」
「そう言われましても…」
名前や顔すらも分からないのでは、お礼の言いようが無い。
「そもそも!誰なんですか!」
バンッ、と立ち上がり叫ぶ。
「ご家族の前ですよ、冷静にしてください」
またもバッサリ言われ、素直に座る。
「彼女は、菅原雪さんと言います。
元々、ここの外科と救命に居た人なんです。
オペも事務も、なんでも器用にこなす人でした」
でした…?
「でした、と言うのは?」
「それが、急に辞めてしまわれたんです。
今も時々、非常勤務医として月に数回いらっしゃる程度でこちらからコンタクトは取れないんです」
「そうでしたか…」
「ですが、お礼を言いたいのならこちらにかけてみてはどうです?」
と、名刺を差し出す。
「菅原先生の名刺です。
今は法医学者を主にしているそうで…」
法医学…。
確か…医学に基づいて刑事問題を研究し、鑑定する学問だったかな。