第5章 本領発揮
「救命に居た人でも、そんな仕事に移るんですね」
「菅原先生は別ですよ。
あの先生の場合、いつもどこかからの勧誘は受けてましたから」
「そうなんですか?」
そんなに腕の良い人なんだ。
「ええ、腕が優秀ですから」
「美人でしたからね、あの人」
「腕が、優秀でしたから」
決して、美人だとは言わない。
「外科医は腕と経験が全てですよ、他には何も要りません。
その点、菅原先生は患者さんに感情移入もせず腕も優秀でした」
外科医として優れた人です、と続けた。
「そうなんですか」
なんとなく、その人に興味が出て来た。
感情移入をしないと言うならば、目の前に犯罪者が居ても治療するって言うのだろうか。
「あ、すみません。
私としたことが、つい話し過ぎてしまいましたね」
申し訳なさそうな顔をする師長。
「いえ、お気になさらず」
「「ありがとうございました」」
2人に軽く一礼とお礼を言って、部屋を出る。
粧裕は、俺が家まで背負って行くことになった。