第5章 本領発揮
ー月sideー
病院へ着くと、ある一室に通された。
「それで、粧裕は…」
父さんが、重い口を開く。
こういう時は、父さんに任せよう。
「軽い脳震盪です、命に別状はありません。
2、3日安静にさえしていてくれれば、お家に帰っていただいても結構ですよ」
最後には、キザッたらしくメガネを持ち上げる。
「発見が遅かったのでどうなるかと思いましたが、先生の適切な処置のお陰で後遺症も何も残らないと思っても良いですよ。
勿論、傷も残らないと思います」
看護師長、と名乗った女性が告げた。
「そっか…」
ホッ、とすると一気に脱力感に襲われる。
「医師として、当然のことをしたまでです」
「先生のことを言っているんじゃありません。
救急車で応急処置をしてくださった先生のことを言っているんです」
ピシャリ、と言い放った。
「いや、でも…俺だって…」