第5章 本領発揮
席を立とうとした、その時…。
コンコン。
ノック音がして、部屋に医療関係者と思われる男女が、2人入って来た。
「お久しぶりですね」
看護服を身にまとった年配の女性が、恭しく会釈した。
「…はい、お久しぶりです」
またこうして会うとは、思わなかった。
「今回の適切な処置、見事だったよ」
今度は白衣を着た年配の男性が口を開いた。
「本当に、お久しぶりですね。
木崎看護師長、宇佐見医局長」
そう、この2人は医局の中でも上に居る人達。
古株だから、当然私のことも知っている。
「そうだね、君がここを辞めて以来かな。
まぁ、正式には移動したか。
元気にやっているのかい?」
「それなりには」
「いつでも、好きな時に戻ってくれば良いよ。
院長には、私から話を通しておこう。
君なら、歓迎するよ」
「ありがとうございます、では」
そう告げ、足早に部屋から去る。
病院の入口付近まで行くと、ちょうどワタリさん達が入って来るところだったので物陰に隠れた。
そして、通り過ぎたのを見計らって病院を後にした。