第5章 本領発揮
あの彼が慌てると言うことは、何か相当な訳ありの様ですね。
おっと、一応雪に月くんがここに居ることを連絡しなくては。
鉢合わせでもしたら、面倒ですからね。
「さっき粧裕の学校から連絡があったんだ、今日は登校して来て無いって。
一旦家に帰って見て来たけど、やっぱり居なかったよ」
なるほど、先程の電話はそれでしたか。
しかし、これは…。
「誘拐、かもしれませんね。
身代金の要求は?」
ただのサボりとも取れますが、月くんの反応からそうで無いことは確かです。
「…無い」
無い…?
「おかしいですね、誘拐は身代金目的が大半です。
なのに要求が無いとなると…金銭以外の欲求を満たす為、でしょうね」
直接的な表現は避けて話す。
「お金以外…」
ワナワナ、と月くんの唇が震える。
月くんの理解の早さには、毎度驚かされます。
「落ち着け、月。
まずは状況を整理しよう、まだ誘拐だと決まった訳じゃない」
月くんを宥められるのは、やはり夜神さんしか居ませんか。