第8章 復帰命令
Sが出ている間の意識は無い。
けど、周りは私が意識を失っていることに気づかない。
だって、Sが私として過ごしているのだから。
だから逆に、その間の記憶が無いと心配がられた。
お願いだから、変なことは言わないで。
「あそこは、人通りの多い道です。
それなのに、長時間見つからない筈がありませんよ。
身体の状態から考えて、落ちたのは通勤・通学ラッシュ時なんでしょう?L。
周りで階段から落ちた人が居るのに、長時間放置するなんて普通は考えられないと思いますけど」
一気に喋る。
「…そうですね。
とにかく、とっとと消えろ。S。
邪魔だ」
Sにだけ使う、Lの暴言。
これも直接聞いたことはなく、ぼんやりと耳に残っているだけ。
「はいはい、消えますよ」
しばらくすると、意識が覚醒して来た…。