虹彩異色症の女神さんは2人の炎に愛されました【エース・サボ】
第5章 #気づいたら・・・
「いやぁ・・・寒いな・・・」
『火じゃなかったの?』
「寒さは感じるもんだぜ?」
『そうなんだ』
2週間という航海を経てようやくドラム王国に辿り着いた2人。
ここはとにかく寒い。
吹雪で視界はほとんど遮られている。
「黒ひげはさすがにもういないか・・・」
『そうね』
航海中に聞かせてもらった。
エースは白ひげ海賊団の隊長で仲間殺しの犯人を追っているのだと。
アリスの謎が一つ解けたのだった。
『情報を集めるの?』
「いや、次の情報は手に入ってるからな、アラバスタってとこにすぐ向かうよ」
『アラバスタ?』
「砂漠の王国だ」
『今度は暑いのね・・・』
「ハハハッ、だよな」
『じゃあ行く?』
「いや、今日はここで一泊」
『そうね、』
ギュルルルル・・・
エースの腹が鳴った。
「腹減ったー!飯食おうぜ!!」
『うん』
エースは逸れないようにアリスの手を握った。
アリスはそっと握り返した。
『温かい』
「俺は火だからな!」
『そっか』
「お前は冷たい!」
『寒いから・・・』
アリスは身震いした。
それを見兼ねてか、エースはコートの前を開いてアリスを入れた。
『い、いいよ』
「入っとけって、俺も温けーし」
『ほんとだ、温かい』
アリスは想いを伝えられずにいた。
だからこんな小さなことでも嬉しく思えるのだ。
ずっとこうしていたい。
エースという太陽に溶かされていたい。
「お、雪が止んだな」
『本当』
「これなら進みやすいな」
『そうだね』
エースとアリスはそのまま住宅街を歩いて一軒の店に入った。
いきなりの気温差に2人の頬は紅潮する。
「いらっしゃい!」
『とにかく温まろ』
「おっさん!温けーの!!」
「あいよ!」
カウンターに腰掛ける。
そこへコーヒーが運ばれる。
「サービスだよ!」
「おー!あんがとな!!」
「で、注文は?」
『スープがいい、温まりたいの』
「そうだな、おっさんそれで!!」
「ちょっとまってな」
エースはコーヒーにミルクを入れて飲んだ。
アリスはそのまま飲んだ。
「はぁ!」
『はぁ!』
2人の声が重なって、笑いが起きた。
アリスは、少し幸せだと感じるのだった。