第1章 大人
俺は何を言っているんだ、こんな酒が入った体で。
いつ俺の中の本能が理性に勝ってもおかしくないこの状況で、
(何してんだ、俺。)
理性にエールを送りながら、両親に先立たれ、一人暮らしをしているというアパートまで咲羅を送り届けた。
咲羅は、
「ありがとうございました。なんか、今日一日で、大人に近づけた気がします。」
と言った。
本能が勝ちそうだった。
理性頑張れ。
俺は
「ごめんな。」
そう言って咲羅の頭を撫でる。
咲羅は、
「何がですか?」
と笑顔で言う。
俺が咲羅のことを抱きたいなって思ったことなんて言えるわけがないから、
「色々と」
そう言って誤魔化した。
「え…?」
そう言って咲羅は困った笑みを浮かべ、首をかしげた。
もう行ってくれ。
俺の本能が勝つ前に。
「ほら早く寝なさい。」
俺はそう言って咲羅の頭を軽く叩いた。
「痛っ…はーい。おやすみなさい。」
そう言って頬を膨らませた咲羅を見送った。
(まだまだ子供だな。)
「咲羅に大人の世界はまだ早い…か。」
次回の祭り、5年後に23歳になった咲羅に会えるのが楽しみだ。
その時こそは
大人の付き合いをしようじゃないか。
ーーーーーーーーーfinーーーーーーーーー