第5章 文化祭
「こんなとこにいたのか」
聞き覚えのあるその声は直人先輩だった。
「直人先輩!?後夜祭最後まで出てなくていいんですか?」
「咲羅ちゃんがいきなり走って出てったから心配で見に来たの。」
先輩は私の隣に腰を下ろした。
「あの、私大丈夫なんで、直人先輩いないと皆さんが悲しみますよ。」
「俺は咲羅ちゃんがそんな顔してると悲しいな。」
「え…?」
「だからどうしたのか教えて?」
その優しい声に私は口からたくさんの思いが溢れ出た。
「私…先輩のことが、好きなんです!!もう、本当に、ちょっとしたことで嬉しくて、ちょっとしたことで焼きもちやいて、どうしようもなくって……」
その瞬間、先輩の温もりに包まれた。
「せっ、先輩…?」
「あーだめだ、やっぱり好き。」
「なっ、えっ」
「キスしよっか」
「な、なんで、ですかっ」
「咲羅ちゃんのこと好きだから。」
そう一言言ってから先輩は、先輩の唇を私の唇に重ねた。
「我慢してたのになー、咲羅ちゃんが焼きもちやくとか言ったから」
その時後夜祭が終わり、体育館から次々と生徒が出てくる。
先輩はまだ私の腰に手をまわしたままだった。
「先輩っ、ばれちゃいます!」
直人先輩はにっこり笑ってもう一度軽いキスをし、
「帰りの準備して俺の教室来て。」
そう言って何事もなかったかのようにバンドメンバーのもとへ走っていった。
“一緒に帰ろう”
ってことなのかな
私は、ドキドキがおさまらない胸の鼓動を聞きながら、教室へ向かって帰りの準備を始めた。