第1章 痛いのは好き
ここはどこ?
私は誰?
…
……
………
じょーだんです。
さーせん。
うわっ、怒らないでよ。
痛っ!
もっと打って!!
え、気持ち悪い。
ひどい。
言葉の暴力反対。
あ、普通の暴力は大歓迎だからね!
「うわきも……」
「ひどー、それが友達にいう言葉?」
「お前の言動きもいもん。ひくわー。板井野それいつまでやんの」
一緒に登校するこの友達はいつも私をけなしてくる。
なんでも私が殴られることに快感を見出すことが理解できないらしい。
私だって、ちょっとは変かな?って思うからそんなにさらけ出したことはない。
今まで付き合ってきた人にだって殴って欲しいとかは言ったことない。
この子は私の心の友とかいて心友だから包み隠さず出してるだけだし。
痛みに快感を覚えるようになったのは、結構昔から。
あの人は今どうしているのか、ちょっとだけ気になる。
カラーで痛んだ髪をくるくると指で弄ったあと、頬をさする。
ちょっと痛い。
それもそのはず、昨日も彼の気に触ることをいって殴られたからだ。
殴られた跡は、すぐに目立たないようにするけど、すこし残ってしまった。
だから今日はいつもよりファンデは濃い目。
それにあわせるように、アイメイクもがっつりだ。
すっかりギャルが板についてきたんじゃないかと思う。
まだ中学生だって言うのに、こんなにお肌を痛めつけてる自分。
これも仕方の無いことだ。
だって付き合ってる彼がマジネ申なんだもん。
女を殴ることに躊躇しない。
女を殴ったって悪びれもしない。
さらに女を殴ったって人に知られても気にしない。
まさに外道!
普通女に手をあげるのは世間体が悪いから隠そうとしたり、手を上げたあと謝ってきたりするもんだが、私の男は一切そんな様子を見せない。
真剣に私にぴったりの彼だと思う。
いやあ、漫画で見たときもこいつはいい!
って思ったけど、本当だった。
灰崎祥吾。
帝光中バスケットボール部スタメン。
そう、ここはあの有名な少年漫画の世界なのだ。