第1章 赤い緊縛 [原田左之助]
「痛く、ないか。」
そう聞かれ、私は言葉を返す。痛くなかったですよ、と。
すると原田さんは、「そうか」と言いながら、また私の頭を撫でるのだ。
大きな体に包まれ、彼の体温を感じながら、私は少しだけ、原田さんと同じくらい、大人になった気がしていた。
「原田さん」
「…なんだ?」
彼の顔を見て微笑むと、彼もまた、笑みをこぼす。
「愛してます」
いつもは私からなんて到底言えないそんな言葉。原田さんは驚いた顔をしたあと、やっぱり少しだけ笑って、こう言う。
「馬鹿か。俺の方が愛してるに決まってんだろ?」
「負けません。」
「俺もだ。」
甘い言葉は、熱に浮かされて、溶けてゆく。