第2章 Sweet Time~恋のチョコチョコ大作戦~
薬研藤四郎 (審神者⇌薬研)*両片思いです
朝、いつも通り起きて支度をする。
朝餉の時間までちょっと本を読んで。
さて、大広間にいきますか・・・。
なんだか騒がしいと思ったら、乱が「ねえ、主!今日はバレンタインデーって日なんでしょ?好きな人にチョコレートをあげて想いを伝える日なんだよね?主は誰にあげるの?」とすでに広間にいる大将に聞いているところだった。
大将の好きな人か・・・気にならないと言ったら嘘になる。
っていうか、もしいるんだとしたら俺っちの失恋は決定ってとこか。
「なんだかなぁ・・・」
そう一言つぶやいて、俺はみんなの所に向かった。
俺っちが大将の所に来たのは、大将が審神者になって間もなくのことだった。
今では大所帯だが、その頃は俺っちを含め10振くらいしかいなかったし、俺っちは大将の近侍をよく務めていた。
正直、大将に初めて会ったときから心惹かれていたんだと思う。
その時はまだ人の感情などはよくわからなかったから、この気持ちはなんだろう・・・くらいに思っていた。
それから、毎日を一緒に過ごしていくうちに、この気持ちが「好き」という思いであることに気づいた。
この「好き」がまた厄介な気持ちでな。
大将はみんなの大将だってわかってる。
大将はみんなに分け隔てなく優しいし、俺っち達の事を本当に大切にしてくれている。
それは、過去にいろいろな経験やつらい思いをしてきた刀剣達にとって本当にありがたいことだ。
「わかってるんだけどなぁ・・・」
頭ではわかっているつもりなんだけど。
だけどな、他の刀剣達と楽しそうに話していたりすると気になって仕方ないし、今の近侍の鶴丸の旦那の事が正直うらやましいと思ってしまう。
だって、大将と一緒の時間がすごく多いんだぜ?
2人きりになる時間もある。
近侍をやっていた俺っちが言うのもなんだが・・・大将を近くで感じていられるんだ。
今の俺っちが一番欲しいものなんだよな・・・。
「薬研?薬研?」
いち兄の声でハッと我に返る。
「いち兄、悪い。ちょっとぼーっとしてた」
あははと笑いながらいち兄に答える。
「まだ寝ぼけているのかな?」
いち兄の言葉に
「ご飯食べないと、脳が起きないっていうしな。さあ、ご飯ご飯」と言って席に着いた。
「いただきま~~す」
いつもの本丸の朝の風景にちょっとだけほっとしている俺っちがいた。