第1章 琥珀色の月【三日月 宗近】
夜が嫌い
眠るのが怖い
夢を見るのが・・・怖い
今、私は愛しい人の腕の中いる。
「、どうしたのだ?」
柔らかな声が頭の上から聞こえてきた。
「ううん、なんでもないよ」
そう言って、彼の胸に顔をうずめた。
この時間が私にとって一番幸せな時間だ。
「そうか?またうなされていたみたいだが・・・」
心配そうに私の顔をのぞきこんでくる彼は、恋仲である三日月宗近である。
よく眠れないと相談してから、彼は毎日私と一緒に寝てくれている。
彼と恋仲になってまだ日は浅い。
私がよく眠れない理由を彼はまだ知らない。
それでも彼は何も聞かず、ただ私の傍にいてくれる。
きっとこの話を聞いたら、彼の心は離れて行ってしまうだろう。
過去は過去。
ここにいる刀剣達も、過去には様々な経験や思いがあるに違いない。
三日月だってそうであろう。
天下五剣と言われ、たくさんの主に仕えてきたのであるから・・・。
「?」
名前を言われてハッとする。
心配そうに私を見つめる彼の目には、泣きそうになっている私の顔が映っていた。
「ごめん、三日月。いろいろ考えちゃって」
私がよっぽど困った顔をしていたのか、三日月は真剣な顔で私にこう言った。
「よ、そなたの全てを私にくれんかのう。そなたの全てを私が全部受け止めようではないか」
「み、三日月?」
それはどういう事?私の全てって・・・
いろいろな思いが頭の中を駆け巡る。
「過去に何があったのかは、今は聞かないでおこう。いずれ話せる時が来たら話してくれればいい。だが、心配はするな。たとえその話を聞いたとしても私の心はそなたから離れることは絶対にない。ここに約束をしよう」
そういって、三日月は私の小指に自分の指を絡めてきた。
「現世では、これを『ゆびきりげんまん』と言うのだろう?針千本なんて甘いことはいわんぞ。この身をすべてそなたにくれてやろう。それならいいであろう?」
と、私の頬にそってキスをした。