第5章 先輩と彼女
岩泉side
中学三年の時、及川が彼女ができた、と紹介してきた
今まであいつに彼女が出来てもそんなことがなかったため、よく覚えていた
島崎澪、恐らくこいつに出会ってから及川が変わったんだと思ってた
でも、違った
逆だったってそう気づいた時には遅くって
俺もチームメイトも誰も彼もあいつの本心をわかったような気でいてわかってなかったんだと悟った
及川は壊れ始めていた
あいつに出会うまでのイメージは飄々としててつかみにくい、そしてふざけたやつだと思っていた
だが、だれよりも優しく、一個人として人に愛されたいと願う無垢な少年だったんだ
それを誰にも悟られずに生きてきたんだ
あいつが初めて殻を破っていったやつだったんだ
そして心の支えどころでもあったあいつが消えた日から及川はおかしくなった
昔みたいにへらへら笑って、次々と女を乗り換えていた
長く持って一週間、短くて一日と持たず
これが徐々に減りつつはあったが高校一年の夏ごろ、約一年近く続いていた
ようやく落ち着きだしたころには、もう誰に告られようともすべてを断っていた
それでも、バレーだけは真剣に打ち込んでいたから俺は口をはさむことでもないと思い何も言わなかった