第3章 黄瀬の「せ」は誠実の「せ」…?
通されたリビングは清潔感に溢れていて、出された紅茶は高価なカップに入っている。
お茶菓子と一緒にお盆(これも高価そう)で持ってくるあたり、詩音ちゃんはものすごい育ちの良いお嬢様なんじゃないかという気がした。
今更だけど。
最初から品があるとは思っていたけど。
「それで、どうしたの突然?」
詩音ちゃんは席に着くと、当然の疑問を投げかけて来た。
「なんで家知ってるの?」でなくて良かったと正直ホッとした。
…どれだけキセキの奴らの言葉に影響受けてるんだろ、オレ。
「あ〜…えっと………」
言い出しにくい。
赤司っちに行けと言われたから、なんてのも変だし。
正直に言ってもいいだろうか。
「なんでしばらく会えないなんて言ったの?」
「その首の痣、誰がつけたの?」
「オレのこと、嫌いになった?」
…………。
詩音ちゃんじゃなくて他の女から同じこと言われたらと考えたら、すごく重いということに気付いた。
それでも、このままスルーして笑顔でいられるほど、オレは大人じゃない。
彼女のことを、愛しているからこそ
ちゃんと、知らなければならないんだ。
「詩音ちゃん……オレ…!」
「ただいま〜」
………。
お約束というか、なんというか。
オレの言葉を遮るように、底抜けに明るい女性の声が聞こえた。
「あ、お母さん帰って来たみたい。ごめんね、ちょっと待っててくれる?」
そう言って席を立った彼女の言葉に、背筋がピンと伸びた。
お母様!?
今度こそしくじれない!!