第13章 中忍試験〜はじまり〜
そのとき一羽の鷲が里の空を小気味よく旋回した。
その鳴き声に促されたように、カカシは七班に解散を命じた。
「…なら帰るぜ」
踵を返すサスケをサクラが引き止める。
「サスケくぅ~ん!これから私とぉ……チームワークを深めるっていうのは…」
「……お前もナルトと同じだな。はっきり言ってお前の実力はナルト以下だぞ」
その言葉にショックを受け、サクラはあからさまに沈んでいた。
「サスケ、そんな言い方…」
「いいから放っておけ」
そう言うとリエの手を引いて、サスケはその場を後にした。
「サスケ……気持ちはわかるけど……」
先ほどまでとは言わないが、それでもサスケの苛立ちを肌に感じたリエが、なんとか彼をなだめようと声をかけた。
こんな言葉、リエ以外の者が口にすれば「知った風な口を聞くな」と激しく逆上したに違いない。
しかしリエが本当にサスケの気持ちをわかってくれていることを彼自身も知っているし、何よりもサスケが彼女を傷つけるようなひどいことを言うことはない。
サスケはため息をひとつ零し、リエと手をつないで指を絡めた。
「……悪いな。心配させちまった」
そう言った彼の声に、もう苛立ちや怒気は感じなかった。
「ううん。でも…愚痴があれば言ってほしいし、悩んでいるなら話を聞くだけでも出来るから、一人で悩まないで一緒に悩ませて。私はずっとサスケの傍にいるから」
微笑みを零すリエに湧き上がる愛情を感じて、サスケはその腕に彼女を閉じ込めた。
自分の腕にすっぽりと収まってしまうほど華奢な身体は繊細で、守るべき存在。
((だけど、いつも守られているのは……オレの方かもしれないな……))