第13章 中忍試験〜はじまり〜
本日の任務もDランク。
波の国から戻って以来、また彼らの任務は通常通りの簡単で安全なものに戻っていた。
変わったのは、彼ら七班内の関係である。
リエとサスケに関してはすでに述べたとおりだが、
問題はナルトとサスケだ。
波の国で何かあったのか、ナルトは前以上にサスケを意識していた。
サスケを何とか出し抜くために手柄を立てようと奮闘してみるものの、やはり実力には敵わず、終わる頃にはボロボロ。
結局ここぞというピンチを救うのは、サスケだったりするわけである。
例の如く、本日もズタボロなナルトはサクラとサスケの肩を借りて帰路に着く。
(リエが肩を貸そうとしたがサスケがそれを許さなかった)
「もう、ムチャするからよっ!」
「大丈夫?ナルトくん」
「ったく、世話のやける奴だな」
そんな各々の反応だが、冷たく嘲るサスケにナルトは憤慨した。
そんな彼らを傍目に見ていたカカシは、困ったように眉をひそめる。
「んー……チームワークが乱れてるなぁ」
その言葉に触発されたナルトは更にサスケを責めてみる。
「そーだそーだ!テメーがいつも出しゃばるからだっ!」
弱い者ほどよく吼える、とはよく言ったもので。
サスケはそんな取り留めのない言葉を切って捨てた。
「……そんなにオレに借りを作りたくねーなら」
向けた背を翻し、サスケは強くナルトを睨みつける。
「オレより強くなりゃいーだろが」
水の国でのタズナの護衛。
あのときから、サスケの中には深い焦燥感が煽っていた。
“井の中の蛙”…まさにそれだった。
あの程度の忍に破れているようじゃ
あの男は、イタチは殺せない。
リエを守ることだって出来やしない。
その激情が、力への渇望が、彼の心の琴線を弾くのだ。
今のサスケにとってDランク任務、いや、七班としての自分に興味が持てなくなっていた。
((ちくしょう……イラつくぜ。外にはオレより強いヤツがゴロゴロいるってのに))
そんなサスケの心情に、リエは気付いていた。
だが同時に、自分が彼の為に出来ることは、ささくれた彼の心をほんの少し解すことだけだということも理解していた。
どんなにリエが一緒にいても、サスケの闇は消せないほど深い。
そのことが寂しくもあり、悲しくもあった。