第12章 波の国〜告白〜
戦いの傷痕は深く、何日もの治療を要した。
そして五日目の朝。
傷のほとんど癒えたナルトとサクラ、そして前日まで寝込んでいたカカシもリハビリの為にと松葉杖をつきつつ、共にタズナに付いて橋へと出かけた。
ツナミとイナリは、町内会の用事とやらで外出中。
最も重傷を負ったサスケは布団で休養、
リエは看病という名目で留守を預かっている。
青い果実 12
潮風がわずかに開いた窓から勢いよく吹き込み、部屋の壁に掛けてあった写真や戸がカタカタと揺れた。
窓のすぐ下で眠るサスケの髪もサラサラとそよぐ。
リエはサスケを起こさないようにゆっくりと立ち上がり、そっと窓を閉めた。
ガラスの向こうの海がキラキラと眩しく光っている。
波の音に混じって遠くの方で工事の音が聞こえた。
平和なひと時に、あの戦いが夢だったかのような気さえしてくる。
「……ん…リエ……?」
微かな気配でサスケが目を覚ましてしまったようだ。
「ごめんねサスケ、起こしちゃって」
「いや…大丈夫だ」
ゆっくりと体を起こしたサスケ。
その顔の治療跡や体に巻かれた包帯を見て、リエは眉を下げた。
「……身体、まだ痛む…よね」
「そんな顔するな」
今にも泣き出しそうなリエに、サスケは困ったように髪をかき上げる。
「こんな傷、すぐ治る」
リエが安心出来るようにと、サスケは笑みをつくってみせた。
それでもリエは影を落としたままだ。
リエはそっとサスケの手を握った。
あのときの冷たかった彼の手を思い出し、身震いする。
「私あのとき……すごく怖かったの。サスケがこのまま目を開けることがなかったら……そう思うと、怖くて、たまらなかった」
声を震わせながら、リエは続ける。
「私、いつも守られてばかりで…何も出来なくて……悔しいよ。もっと強くなりたい。強くなって、サスケを守りたい。
もう……大事な人がいなくなるのは嫌」
握った手を、優しく握り返してくれた。
この温もりを失いたくない。
傍にいたい。
傍にいてほしい。
ずっと、ずっと。
誰よりも愛おしい、この人と。