第10章 波の国〜修行〜
その日の夕食時、七班一行はタズナに波の国の英雄の話を聞くこととなった。
事の首謀者ガトーに対し、果敢にも立ち向かった男、カイザ。
彼はタズナの孫、イナリの義父であった。
国の為、人々の為にガトーに反旗を翻し、残虐な公開処刑で彼の人生の幕は下ろされた。
正義感が強く誰からも愛された彼は、テロリストの汚名を被り、斬首されたという。
彼は英雄だった。
しかし、遂げた最期は悲惨なものだった。
彼の命は、この国の人々の希望という光と共に奪われたのだ。
この話を聞き、リエはガトーに対し怒りを覚えた。
あまりの醜悪さに吐き気がする。
目の前で義父を殺されたイナリの気持ちを思うと、リエも心が痛んだ。
タズナの家の屋根に登り空を見上げる。
厚い雲で覆われ、希望の星が見えず、どんよりとしている。
まるでこの国の現状を表しているようにリエには見えた。
夕方サクラと二人でタズナの護衛に出たときに見た、波の国の現状。
ガトーによる圧政。
外国との貿易も制限された国は衰え、実に貧しかった。
そして何より活気がなく、行き交う人々は荒んだ目をしており、
襤褸を纏った子供は、サクラの与えた飴に歓喜するほどに飢えていた。
カイザの死が、国そのものに影響している。
それほどまでに偉大な男だったのだろう。