第9章 波の国〜鬼人〜
程なくして一行は目的地に着いた。
彼らがたどり着くまでの間、幸運なことに再不斬や二人組みの刺客の雇い主ガトーからの襲撃はなかった。
さしたる苦労もなくカカシを担ぎこめたのは本当によかった。
タズナの家に着いた一行は、すぐにカカシを休ませる。
そのままカカシは眠りについた。
よほど体力を消耗したのだろう。
カカシは数日後、ようやく目を覚ました。
「先生、お加減はいかがですか?」
リエが心配そうに顔を覗き込むと、カカシは力なく微笑んだ。
「まだ本調子じゃないけど大丈夫よ。心配かけちゃってごめーんね」
そういうカカシの声色に何かに追い詰められたような、考え悩んでいるような、心ここにあらず、というような印象を受ける。
「……カカシ、何を考えている」
ややあって、カカシはサスケの問いに答え出した。
「追い忍は殺した者をその場で処理するものなんだ」
サスケ以外の面々はカカシの言葉だけでは意を汲みきれなかった。
「それが何なの?」
「……おそらく、再不斬は生きている」
その言葉に、皆驚愕の表情を浮かべた。
「どーゆーことだってばよ!?」
「カカシ先生、ちゃんと確認したじゃない!」
ナルトとサクラの問いに、カカシが答える。
「あの追い忍が使った千本という武器は、急所にでも当たらない限り殺傷能力は低い。人を仮死状態にするくらい容易なはず。
まだ確証はないが……くさいとあたりをつけたのなら出遅れる前に準備しておく。それも忍の鉄則だ」
カカシの言葉に、リエの肩に力が入った。
無論戦わなくていいのならそれにこしたことはないが、再不斬に続く新たな刺客が仕掛けてくる可能性だって拭いきれない。
カカシが寝込んでいる間リエも遊んでいたわけではないが、準備をしておくにこしたことはない。
忍たるもの、常に先の何手も状況を読むものだ。
それが生死を分かつ確率を握る鍵となるのだから。
「先生!準備って何しておくの?」
再不斬のことは理解出来た。
しかし利発なサクラも準備とはと首を傾げる。
今のカカシは動ける状態ではない。
自分達だけで出来ることとは何だろうか?