第5章 第七班
四年前。
イタチがサスケ以外の一族を抹殺し、里を抜けたと聞かされたときは、予想していたとはいえ本当に悲しかった。
イタチは決して許されないことをした。
けれどイタチが突然あんなことをしたのには、絶対に大きな理由がある。
きっと、あの事件はイタチが自発的にやったことではない。
サスケを殺さなかったのは、イタチが本当にサスケのことを大事に思っているからだ。
リエはそう信じていた。
イタチの優しさが嘘だったなんて思わない。
それにもし本当にイタチが非情であったのなら、あのとき、自分の元へなど来なかっただろう。
あの惨劇に巻き込まないように
見せないように
意識を奪ってまでも守ってくれたのだと思う。
最後に微かに見たイタチの表情が、全てを物語っているような気がした。
彼を信じているから、リエはイタチを恨むこともないし、また会いたいと願っている。
しかし一人残されたサスケは違った。
イタチを恨み、一族の復讐をしようとーーー
イタチを、殺そうとしている。
大切な家族を、誇りに思っていた一族を殺され
そして、自分が心から信じていた兄に裏切られた。
その心の傷は、リエが思っているよりも相当深いものだった。
イタチが里を抜けてから、イタチの名前はお互い出していない。
けれどサスケは、リエがイタチを恨んでいないことに、
彼を信じていることに気付いている。
お互いが真逆の考えを持っている。
どんなに言っても、その考えは変わらない。
お互いがそう感じているから、その話にはあえて触れることはなかった。
ずっとサスケの傍にいるのに、どこか遠くにある心の距離。
それがリエは、とても悲しかった。