第33章 明日へ
「……これから、どうするんだ?」
シカマルが投げ掛けた問に、リエは小さく首を振る。
「…どこへ行くかも決めてないんだ。どうするかなんて、全然。とりあえず、気の向くまま歩いてみようかな…なんて、漠然としすぎてて笑っちゃう?」
「そうか。いや、そんなもんだろ、あてのない旅ってのは」
「そっか。そうだね」
リエがふと空を見上げれば、鳥達が空高く飛んでいた。
風にのって自由に飛ぶその姿を見て、彼らが向かう方へ進んでみたいと思った。
その先に何があるのか見てみたい。
そこではどんな人達と出会えるのだろうか。
そこで自分は、何を得るのだろう?
「…そろそろ、行くね。皆によろしくね」
「自分で言わなくていいのか?誰にも言ってねーんだろ、旅に出ること」
「……言えないよ。皆辛いことがあっても必死に頑張っているのに…私は、この現実を受け入れるのが辛すぎて、逃げるようなものだもの」
きっとシカマルは全部わかってる。
そんな気がして、リエはつい本音を漏らした。
「旅出るのも本当は…修行はもちろんするけど…ただ私が、ここにいると気持ちの切り替えが出来ないからっていう、自分勝手な理由なんだ。修行の旅ってことで了承はしてくれたけど、綱手様にだってすごい我儘言って、迷惑かけた。…過ぎたことにいつまでもうじうじして、情けないって自分でもわかってる。こんなだから皆には…なんて言えばいいかわからないの」
シカマルは黙って聞いていたが、真っ直ぐにリエを見つめ、言った。
「それでも、ちゃんと帰ってくるんだろ?」
リエは一瞬目を丸くし、口元を少し緩ませ頷いた。
彼のその一言には、今のリエをも肯定してくれる、そして帰りを待っててくれる、思ってくれる優しさが込められていたから。
嬉しかった。
「うん。ここが私の帰る場所だから」
太陽が昇り、リエの髪がキラキラと光る。
シカマルはそれを素直に、綺麗だと思った。
「なら、いい。帰って来たとき、黙って出て行ったこと皆に怒られろ」
笑いながら言うシカマルのそれは、リエの心を少し軽くしてくれた。