第33章 明日へ
「こんな朝早くから…見送りに来てくれてありがとう、シカマルくん」
そう礼を言ってから、リエは彼の身につけている中忍ベストに気付き、シカマルがリーダーとなってサスケを追っていってくれた、と聞いたことを思い出した。
「それから、遅くなったけど、中忍試験合格おめでとう。それと…あのときサスケを追ってくれて…どうもありがとう」
「……いや。オレは何も出来なかった」
「ううん。シカマルくんじゃなかったら、皆無事だったかわからなかったって、聞いたよ」
自分がしばらくの間里を出ることは伏せたが、大怪我を負ってまでサスケを助けようとしてくれた皆に御礼と挨拶をと思い病院に行ったときに、キバやチョウジからあのときのことをかいつまんで聞いた。
相当な死闘を繰り広げ、砂の忍の手も借りたこと。
そして、シカマルが的確な指示を出してくれたことも。
「そんな立派なもんじゃねーよ。結局…任務失敗してんだからよ」
「それでも、私は感謝してる」
サスケの自分勝手の行動でもしも仲間達の命がなくなってしまっていたら、それこそ立ち直れない。
「本当に、ありがとう」
「……あぁ。まぁじゃ、素直に受け取っておく」
そう返したものの、シカマルは内心戸惑っていた。
こうして対面しているリエに、いつものあの柔らかな笑みがない。
綱手から事情を聞いていたとは言え、感情を失くしたリエに初めて会ったシカマルには、その衝撃は大きかった。
暖かい眼差し。
幸せそうな笑顔。
いつも自分が見ていた彼女は、ここにはいない。
同時に、サスケの存在がリエにとってどれほど大きなものだったのか、改めて痛感した。