第32章 未来の為に
しばらくの沈黙の後、リエはポツリとこう言った。
「夜家にいると…どこかで、サスケの帰りを待ってる自分がいるんです。…一人の時間が未だに慣れなくて…ホント、馬鹿だなって思うんですけど……居心地のよかったはずの我が家にいることが、今は苦しくて…だから…外に出たくて…」
朝は家事や出かける準備に追われて
昼はアカデミーや任務で出ていて
夕方は各々に修行していたりして
二人きりでゆっくり出来る、お互いが家に帰って来てからの時間が、一番サスケとの繋がりが濃かった。
夕飯を食べながら、その日あったことを話して
一緒に笑って
一緒に悩んで
毎日その時間が楽しみで
沈黙の時間さえ、穏やかで、心地よかった。
だからなのか、サスケと過ごした時間の中で一番多く共に過ごした夜の時間帯は、特に彼のことを強く思い出してしまう。
サスケの声
サスケの笑顔
サスケの温もりーーー
彼の全てが未だに身近に感じられることが嬉しくて
でも、当たり前に隣にあった幸せが”思い出”になってしまった現状が
いくら待っても独りでしかない、光の消えた家にいることが
今は胸を抉るほど辛いのだ。